ブラックスターの鎖鎌や、キッドの二丁拳銃に憧れたマカ。
ソウルと共に、新たな戦闘スタイルに挑戦するが・・・!?
※先日公開したものを、ちょっと整えました。
ソウル視点です。
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今日は、学校は休みだ。
自分の部屋で、俺は、机の上に足を乗せてイスにふんぞり返っていた。
耳にイヤホン突っ込んで、好きな音楽をガンガンにかけて。
いい気分だったのに・・・横からイキナリ体を揺すられた。
いつの間にか、パートナーである鎌職人の女、マカがやってきて、真剣な目でなにやら言っている。
俺はしぶしぶイヤホンを抜くと、マカの顔を見た。
「ああ?なんだよ。ノックくらいしろよ」
「したよ。ソウルが聞こえなかっただけでしょ」
マカが頬を膨らませる。
パートナーとしてルームシェアをしている俺たちは、ふたりのルールとして、互いの部屋に用事があるときは、必ずノックをするようにしていた。が、こうして俺がイヤホンして音楽を聞いていると、ノックを聞き逃すことも多い。
「あっそ。んで、なんだよ」
「だーかーら、ちょっとお願いがあるの。聞いて」
マカが、俺の腕を掴んで揺する。
ったく、しょうがねえな。
「あのね、ソウル。ソウルも、椿ちゃんみたいになれないかな」
「はあ?魔鎌である俺に、暗器になれと?」
イスにふんぞり返っていた俺は、思わず体を起こした。
眉を吊り上げるようにして一瞬口をつぐんだマカは、俺の睨みつける視線に対抗するかのように、一気に話し出した。
「違うの、そうじゃなくて。一度やってみたかったんだよね、二刀流!ほら、キッドくんみたいな二丁拳銃は、ソウル一人じゃ無理だろうけどさ。椿ちゃんみたいな鎖でつながってるタイプだったらできるんじゃないかと・・・」
「マカぁ、おまえ、鎌職人としてのプライドはないのかよ」
俺がマカの鼻先に指を突きつけて言ってやると、マカはさすがに鼻白んだ。
ムッとした様子で、逆に俺に食ってかかってくる。
「あるよ!いつか、ママみたいに立派な鎌職人になるんだもん!でもさ、やっぱ、いろんな戦い方ができたほうがいいと思わない?」
ママみたいに立派な鎌職人になる。それはマカの口癖だ。
俺はでかいため息をひとつついた。
どうせ、この頑固モノは・・・俺がいくら抵抗したって、諦める気はないんだろうな。
「チッ、鎖鎌かよ・・・椿のマネみたいで、COOLじゃねぇな」
俺がそう呟くと、マカはニヤリと笑って、後ろ手に持っていた本を俺に差し出した。
「そういうと思った」
「なんだ、これ?」
「ヌンチャクって言うんだって。アジアのほうの武器で、ほら、鎖でつながってるでしょ」
喜々として解説するマカ。・・・この本オタクめ。
っつーか、これ、そもそも鎌じゃねえじゃん。
思いっきり嫌そうな顔をした俺に、マカはニコニコと笑いながら言い放った。
「ソウルさーん、COOLなソウルさんなら、これくらいの変身、お手のもんですよね?」
目が笑ってないところがコワイ。
・・・く、くそ・・・ここで断ったら、COOLじゃねぇ・・・よ、な・・・
んで、鎌の俺が、ヌンチャクとか言うものになれるのかと思いきや・・・
変身できてしまった。
「おいマカ、おまえ、使い方分かるんだろうな?」
二本の短い棒が、暗器バージョン椿のように、鎖でつながれた状態。
これを、振り回して打撃攻撃をするらしい。
「うん、大丈夫。本にイラスト付きで解説があった」
それ、大丈夫って言うのかよ?
俺の片方を掴み、軽くウォーミングアップするかのように振り回すマカ。
「うわぁ、鎌より軽い軽い!」
「おい、俺で遊ぶんじゃねえ!」
「もう、うるさいなぁ」
文句を言ってやると、マカは口を尖らせた。
よし、とばかりに足を軽く開き、ふんっと一歩踏み出して、俺を振り下ろす。
そして、戻ってきた俺のかたっぽ(ああ、説明しづれえな!)をぱしっと、と、と・・・?
ガイィィィン!!
「いったぁぁぁぁい!」
マカのバカが、キャッチし損ねた。
図らずも、俺はマカの脳天を直撃する形になり・・・
「もぉ、ソウル!ちゃんとやってよ!」
「知るか!」
マカはでかいタンコブのできた頭をさすりながら、もう一度チャレンジする。
どうでもいいけど、俺、目回りそうなんですけど。
「んーと・・・だから・・・こうやって・・・せぇのっ!」
スコーン!
あ、今度は、肩・・・
腕がしびれたのだろう、俺を取り落として、悶絶する。
「お、おい・・・諦めろよ、やっぱりお前は鎌使いなんだって」
ヌンチャクから、人間の姿に戻った俺が、恐る恐るマカに近づくと、マカはすくっと立ち上がった。
「わかった!鎖が短いんだよ!ソウル、もういっかい。今度は、もっと鎖を長くして」
「・・・はいはいっと」
こうなったら、もう誰にもマカを止められない。俺は、再びヌンチャクへと姿を変えた。
ご命令どおり、鎖は長め。
「よぉし・・・こうやって、こうやって・・・うん、いい感じ・・・それっ!」
ぶんっと振られて、片方の棒が空を裂く。
臨界点まで伸びきった鎖が、マカの動きに合わせて引き寄せられ・・・
「あ、あれ?」
ジャラジャラジャラ・・・
今度はぶつかることはなかったものの、俺の長い鎖は、マカの体にしっかりと巻きついた。
うわ・・・お、おい。
ブン回されていた勢いで、何重にもきっちりと巻きついたこの感触・・・
マカを、抱いてるのと同じことじゃねえか!
「ちょっと、ソウル!何やってんだよ、痛い!」
「だから、お前が下手クソなんだろ!」
「ソウルが上手く操られてくれないからいけないんだよ!」
マカが俺の鎖の中で暴れる。
薄い肩、細い腰、でも見た目よりも柔らかい・・・
・・・・・・やべ。
俺は、ヌンチャクから人間の姿に戻った。
両腕で、マカを包んだまま。
驚いたマカが、ますます暴れる。
「なんだよソウル、やめてよね」
「黙ってろって」
マカの肩に顎を預けて、俺は言った。
「お前は鎌職人で、俺は魔鎌なんだよ。二刀流とか、バカなこと言い出すなよ。俺たちらしく、COOLに行こうぜ」
「・・・うー、私もカッコよくソウル振り回してみたかったのに」
腕の中で、マカがうなだれる。
俺は歯をむき出して笑った。
「バーカ、おまえは、鎌振り回してるときが一番カッコいいんだよ」
COOLな俺にふさわしい、最高にCOOLな職人だよ。
俺たちは、額を合わせて、笑い合った。
「だね!」
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あとがき
先日公開したものをちょっと整えました。
今後の課題・・・マカの外見描写・ソウルって何聞いてるの?・ソウル武器状態のときの動き・・・
さて、やはりアニメをテキストにするのは難しい。
FQとは年季が違うしなぁ。
精進あるのみです。
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