アニメ25話で、バンダナからカチューシャに換えたソウルを見て、思い余って書いたもの。
短いです。
「カチューシャを買いに行く??」
「そ。女の行くような店にひとりで入るのもヤだし、ちょっと付き合ってくれよ」
一日の授業を終えて、教科書を揃えてカバンにしまっていた私は、ソウルに声をかけられた。
ちょっと斜にかまえたように、目つきの悪いソウルが、戸惑う私を不思議そうに見ている。
ちょっと待って、カチューシャ? カチューシャって、あれでしょ?
向けた視線の先には、ふわふわの前髪をピンクのレースのついたカチューシャで留めた、クラスメイトの姿があった。
「ヤだ。なんで私がそんなのに付き合わなきゃなんないわけ?」
・・・ソウルってば、あんなものを、誰にプレゼントするっていうの。
私がツンケンした口調で返すと、ソウルは驚いたように赤い目を見開いた。
「マカぁ、何怒ってんだよ。買い物に付き合ってくれって、言ってるだけだろ?」
「ヤだ。ソウルひとりで行けば? 私、図書室寄って帰りたいし」
ふん、怒るも怒らないも。
なんで私が、ソウルのカノジョのプレゼント選びに、付き合ってやらなきゃいけないんだよ。
「だーかーら、ひとりじゃ店に入りづらいんだって、言ってんだろ」
「ヤだ、触んないでよ! ソウルなんて、知らない!」
私は、差し出されたソウルの手を、バシッと思いっきり振り払って。
そのまま、ソウルと目も合わさずに、教室を飛び出していった。
「なんだよ、ソウルったら。そんな女の子ができたんだったら、一言くらい相談してくれたっていいじゃん」
どさどさどさっ、と乱暴な音が図書室に響く。
私は、、読もうと思っていた本を、ここぞとばかりに片っ端から抜き出して、机に積み上げた。
「ひとりで店に入るのがヤだとか言っちゃってさ、白々しいっつうの」
どさっと、勢いよくイスに座ると、一番上の本を手に取る。
「ってゆーか、私に頼まなくたって、椿ちゃんとか、ブレアとか、リズとかパティと行けばいいじゃん」
ふくれっつらで表紙を開くと、そこにあった文字は。
“エクスカリバーの休日・下”
どうやら、怒りのあまり、読んでいない上巻をすっとばして、下巻を持ってきてしまったらしい。
はぁぁ、私、バカみたい。
本を閉じるとためいきをついて、机に突っ伏した。
いくら私とソウルが、パートナーだって言ったって。それは、あくまで職人と武器の関係なんだよね。
だから、私がここでモヤモヤしてたって、ぜーんぜんどうしようもないことなのに。
・・・ん? これって、・・・ヤキモチ?
いや、違うって。ゼッタイ違う。
バッカみたい。なんでソウルなんかにヤキモチやかなきゃいけないんだよ。
違うっつうの。私はただ、いつも一緒にいるのに、なんで好きな女の子ができたことを、相談とか報告とかしてくれなかったのかって思ってるだけ。
あーあ、ロクに集中もできないや。
ソウルと顔合わす気にもなんないけど、帰ろ。
私は、本を両手に抱えて、1冊ずつ棚に戻していった。
うわ・・・しまった、一度に持ち過ぎた。
バサバサバサッ!
抱えていた本が、床に散らばる。
「もー、ほんっとムカツク!」
思わず叫んでガバッとしゃがみこんだ、その視界の隅に、見覚えのあるスニーカー。
私は体を硬くした。
「げっ、ソウル!?」
全く気づかなかった。
まだ心の準備ができてないのに・・・恐る恐る視線を上げていくと、ふてくされたような顔のソウルが、私を見下ろしていた。
「迎えに来てやったのに、アイサツがそれかよ」
ポケットに手をつっこんで、ソウルがニヤリと歯をむきだして笑う。
いつもの表情に、気分が少し和らいだ。
「もう、しょうがないなー。そんなに言うなら、付き合ってやるよ、買い物」
拾った本を軽くはたくと、私はそれまでのモヤモヤをふっきるように、明るい声を出した。
胸の痛みは無視。
ヤキモチとか、そんなんじゃない。
ただ、私は・・・
「これ片付けるからちょっと待ってて」
私は再び本棚に向かう。すると、それを待っていたかのように、ぎこちない声色で、ソウルが言い出した。
「前髪さ、切るのもめんどくせーし、バンダナも暑苦しーしさ。なんか、シンプルで、COOLな俺に合うようなカチューシャ、見繕ってくれよ」
え?
「俺に?」
背後で、ソウルが笑う気配がした。
「そ。俺に」
そっか。
私って、ほんと、バカ。
「りょーかい。ソウルに似合う、最高にCOOLなカチューシャ、探してやるよ」
私は振り向いて、ニッコリと笑いかけた。
照れくさそうに口を歪める、私の大事なパートナーに。
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あとがき
カチューシャのマカサイドです。
マカの口調の再現は・・・難しい。
わざわざソウルサイドと分けた理由のひとつは、本を片っ端から読み漁るマカが書きたかったから。
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