アニメ25話で、バンダナからカチューシャに換えたソウルを見て、思い余って書いたもの。
短いです。
「カチューシャを買いに行く??」
「そ。女の行くような店にひとりで入るのもヤだし、ちょっと付き合ってくれよ」
俺が、一日の授業をすべて終えて教科書を揃えているマカに、声をかけると。
奇妙な表情でしげしげと俺を見たマカは、しかめっ面で応えた。
「ヤだ。なんで私がそんなのに付き合わなきゃなんないわけ?」
何で怒ってんだ?こいつ。
断られると思っていなかった俺は、正直面食らった。
俺、なんか怒らせるようなこと、言ったか?
「マカぁ、何怒ってんだよ。買い物に付き合ってくれって、言ってるだけだろ?」
「ヤだ。ソウルひとりで行けば? 私、図書室寄って帰りたいし」
くすんだ金色のツインテールを揺らして、口を尖らせるとそっぽを向いてしまった。
なんだよ、かわいくねェ!
こうなると俺も、大人しく頭下げるようなマネ、できるはずがなくて。
思わず声を荒げる。
「だーかーら、ひとりじゃ店に入りづらいんだって、言ってんだろ!」
「ヤだ、触んないでよ! ソウルなんて、知らない!」
バシッ!
伸ばした手は振り払われてしまった。そのまま、俺と目も合わさずに、マカは教室を飛び出していく。
俺は、伸ばした手をひっこめることもできず、その背中を見送るしかなかった。
わけわかんねェ。なんだよ、マカのやつ。
「よおぉー、ソウル! どうしたんだよ? いつもの痴話ゲンカかよ?」
「そんなんじゃねーよ」
後ろからかけられた声に、ムッとして俺が振り向くと、帰り支度を終えたブラック☆スターと椿が興味深そうにこっちを見ていた。
「でもさぁ、なんだぁ? その、なんちゃらってヤツ。誰かにプレゼントするんだろ?」
「ブラック☆スター、カチューシャです」
頭の後ろで腕を組んでふんぞり返るブラック☆スターを、椿がなだめるようにフォローする。
「違うって。髪も伸びてきたし、バンダナも飽きたから・・・ちょっと気分変えてCOOLにイメチェンしようかと思ってさ」
俺が、吐き捨てるように言うと、ブラック☆スターと椿は一瞬キョトンとして、それぞれに笑い出した。
「なーんだ、てっきり女でもできたのかと思ったぜ。だよなぁ、俺様を差し置いて、ソウルに女ができるわけねーよなぁ!だーっはっはっはっはっは」
「ああ・・・そうだったんですか。マカちゃん、誤解しちゃってますね」
高笑いするブラック☆スターと、目を細めて笑う椿。
その二人を見て・・・俺は、マズい物を口に押し込まれたような気分になった。
ほのぼのとしたふたりから目をそらし、髪の伸びた頭を掻く。
「ああ・・・そういうことかよ」
マカのやつ、普段は男っぽいくせに、ヘンなとこで女みてェなヤキモチやくのな。
バカじゃねーの。俺が、誰かにプレゼントだなんて、そんなCOOLじゃねェこと、するわけないっつーの。
今、俺は、棚に本を戻すマカの後姿を見つめている。
「別に、私がご一緒してもいいんですけど。それじゃ後々大変でしょう?」
「おめェら、ほんっと小物だよな! だっせェェェ!」
椿(とブラック☆スター)に追い立てられるようにして図書室にやってくると、マカは一人でぷんぷんしながら本を漁っていた。
ふっと、笑みが漏れた。
俺も、お前も、COOLじゃねェよな。
本を両手に抱えて行ったり来たりするマカは、腕組みをして扉にもたれている俺に気づかない。
バサバサバサッ!
その手から、本が数冊滑り落ちたのをきっかけに。
俺は、静かに近づいていった。
「もー、ほんっとムカツク!」
ガバッとしゃがみこんだマカの前に立つと、俺にようやく気づいたらしい彼女は、ハッと体を硬くした。
「げっ、ソウル!?」
嫌そうにゆっくり顔を上げたマカと目が合う。
「迎えに来てやったのに、アイサツがそれかよ」
ポケットに手をつっこんで、俺はニヤリと笑ってやった。
自分の姿が、マカの見開いた目に写っていた。彼女は、ゆっくりとまばたきすると、表情を緩める。
「もう、しょうがないなー。そんなに言うなら、付き合ってやるよ、買い物」
拾った本を軽くはたくと、マカは表情とは裏腹の、不自然に明るい声を出した。
「これ片付けるからちょっと待ってて」
再び本棚に向かうマカの背中に、俺はさりげなく言った。
「前髪さ、切るのもめんどくせーし、バンダナも暑苦しーしさ。なんか、シンプルで、COOLな俺に合うようなカチューシャ、見繕ってくれよ」
「俺に?」
マカが、ピタリと動きを止めた。
俺は、前髪を引っ張りながら、笑う。
「そ。俺に」
マカの背中が、微かに震えた。
「りょーかい。ソウルに似合う、最高にCOOLなカチューシャ、探してやるよ」
振り向いてニカッと笑ったマカは、暗い図書室で、最高にまぶしく輝いていた。
COOLじゃないところも全部ひっくるめて、俺の、大事なパートナー。
ただ、ひとりの。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
あとがき
もともとは3人称でしたが、バラしました。自分の限界を感じた。
maka sideも書きます。
一応、ウチのソウル&マカは、お互い強い感情で結ばれているものの、それが恋愛感情だとはあまり本人たちが意識してない・・・そんな感じでいきたいです。ええ、今のところは。
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